salmosax note

音楽家・山内桂 の雑感ページ

 台湾9(最終章)

事故は最終台北公演のあとに起きた。
Shih-Yang とタクシーに乗って先に降りてかれと別れたのだが、その時にお金が全て入った袋を車内に落としたのだ。
すぐに気がついて、かれに連絡しようと急いで宿泊する部屋に入ったがワイファイが繋がらない。時間はどんどん過ぎるばかり。外に出てマックに行くもワイファイはないと断られる。明かりの点いているお店に入ると、カップルが交番に連れて行ってくれた。
もうだめだと分かっていたが、届け出はしようと2時間ほど警官とやりあったが、埒があかずに翌日出直すことにした。
お金はいい、、少し残念だけど、、大きなお金でもないし。
でもそのお金は、色んな人たちが関わって助けてくれた9公演の結果なのであった。そのお金を失くしたことが申し訳なかった。


その後4、5日間台北に滞在した。身体とお金の件で遠出する気にはならなかったが、市内はけっこう歩き回った。国際芸術村にも行ったし。遺失物届け出などの関係で毎日のように交番通いも続いた。


ある深夜、ある駅に向かって通りを歩いていて、脇の路地にカフェらしきものを発見。せっかくなので入ってみた。そこの気さくな女性従業員と妙に気が合い、カウンターで話が盛り上がってしまった、と、店の奥からゾロゾロ出て来た野郎たちは、なんと台中で同宿した沖縄のSや北欧のPたちだったのだ。お互いにビックリしてしまったが、更に驚いていたのが仲間のもう一人の男。ずーっと以前に沖縄で会っていたらしく、ぼくのことを覚えていたのだ。
こんな楽しいことが起きるなんて、来年は久しぶりに沖縄かしら。


こんなこともあった。
あるタクシーの運転手は片言の日本語で話しかけてきた。母親が子供の自分にいつも日本語で日本の話を語っていたので喋れると。
その親日の心情はなんなんだろう。今回のツアーで知りたいことのひとつだった。そうして、今回初めて台湾のアイデンティティーなるものを考えた。するとどうしてもここで政治の話に触れざるを得なくなってくる。先住民やアボリジニとの共存、折り合いなども。
もっとも台湾の人々はオープンマインドなので、あまりそんなことを考えていないのかもしれない。逆に言えば、良くも悪くも世界の中で日本人は心が閉じているように感じる。
そして台湾が日本だったことから、なんでも日本的だと思うのも少し違うように感じた。前述した心もそうだし、第一身体そのものが日本人より少しだけど大きく見えたし、建物の造り、部屋のサイズなどは、ヨーロッパ規格だった。


Shih-Yang が交番で防犯カメラをチェックしようという。帰国前日だし時間が惜しかったが、せっかくの申し出なので同行してもらった。
2人が一緒に見ている映像から警官はタクシーを特定し、その場でドライバーに電話し、とっくに警察に届けていることが判明した。そして帰国日午前中にお金の入った袋は戻ってきた。
カメラに驚き、それを市民が見られることに驚き、遺失物届けをしていたのになぜと驚き、無償なのに届け出た運転手の心に驚き、、、。



旅の最初の身体のダメージと終わり方のお金のダメージがありつつも、今回も終わりよければ全てよくなってしまった。
2つのダメージで、こんな素敵な台湾がゆえのはめを外した事件や事故に遭うことなく済んだのだろうか。
台湾の人々に感謝し、親日感に甘えず、それに応えたいと思う。