salmosax note

音楽家・山内桂 の雑感ページ

静 寂

ぼくの音楽の基本にしている即興演奏の説明には途方に暮れてきた。なにしろ形の全くない音・音楽だから。それを語れないのは営業的に致命的だ。
そこで頭を絞ったひとつの言葉が「集中」。能と狂言を引き合いに、この世界はそれら両輪で成り立つのに狂言ばかりが偏重されて集中する能が軽んじられていると。だから自分と聴衆が集中できる環境を希望してきた。でもそれはなにか充分に言い表せてない歯痒い思いできた。

「静寂」という言葉に出会った。ぼくは28年続けている呼吸法による息(気)に無音や小音や細かい音を乗せる。それは波動の世界。コントロールしているのかどうかさえわからないその音たちは、空間と共鳴し満ちて宇宙にも広がる。そこにいる人たちの出している気という波動と混じり反応する世界。思いを乗せないニュートラルな音は各々の記憶を通して深い世界を引き出す。それは各自が宇宙という自分の中を観ることにも通じる。ぼくも自分が出している音に驚き感化され感謝する。でも今の人々は自分に向き合いたくないようにも思えてしまう。
そんな音楽がひとつの在り方としてなければならないし、目指し経験してきた。ざわついた空間ではなく静寂な時空で成立する。

そんな演奏を大分では ATHALL が受け入れてくれてきたのだけど、更にスペースや機会が増えることを願う。時代も追い風になったような気がする。
ちなみに即興演奏というゼロ磁場の経験からさまざまな表現が生まれ、自作曲を演奏するギターとのサガインも活動中だし、映画も作る。。自由に創造するのだ(=SalmoSax)。

2014年 ベルリン