salmosax note

音楽家・山内桂 の雑感ページ

CD「Aki」/サガイン

サガインはぼくの曲を演奏するバンドなんだけど、、、
曲ができる時って、、、こんな曲が欲しいとかを自分にインプットしておくと、その内フッと生まれるとか、最近は自然の中に身を置いていて、サックスが手の中にあって音を出すと曲になるみたいな感じ。
とはいえ、もっぱら即興演奏メインだったのでそんなに多くもない曲たちは、作ったのでなく天からのプレゼントだと思うようになってきた。そんなかれらをもっとリスペクトする演奏をしたいとの思いが叶ったのがサガインなのだ。

父の死後の2015年末、バンド結成準備中に父の任地だったミャンマーのサガインをついに訪れた。悪名高いインパール作戦の最終補給地のそこで物資や食料の調達配給が任務だった。色々な扉を開ける旅だった故か、ミャンマー滞在中に母(サガ)の容態が悪くなりひと月後の2016年正月に他界した。そんな経緯からバンド名をサガインにした。

2016年初期メンバーはヒュー(ギター)と米増博俊(ベース)。ヒューの生ギターがサガインのサウンドを特徴づけ、米増が力づけた。
ヒューが抜けたあと2018年に京都の山崎昭典(ギター)が加入した経緯も天の采配のようだった。彼とは即興シーンだけの付き合いだったので二人共に思いもよらなかった。彼のおかげで音のみか活動範囲も広がり、初っ端から二人で台湾や国内のツアーを数々挙行し、各地で手応えを感じてきた。またサックスと生ギターの組み合わせは珍しいようで、新鮮な音が生まれている。
なお、米増は大分限定で参加している。

ぼくは45年間即興演奏に関わってきた。尖っていたし、情を遠ざけていた。その後呼吸法の効果もあって、形でなく音の中、そして波動に関心が移り、少しは自分自身も緩んできた。そうして即興演奏でない「曲」を公に演奏しそのCDを作るまでになってしまった。

CD制作の経緯も運命的で、2018年末に山崎が大分に来る際に録音をしようと言うので場所は確保していた。
その前夜に佐竹さんにたまたま会うと機材を持ち込んで録音すると言い出し、そして1年間編集を続けてくれた。
一方デンマークのレーベルのヨナスが突然、なぜかCDを出すと言ってくれたのは今年10月のことだった。
その後の流れで、急遽ぼくがやったこともないジャケットと盤面の写真とアートワークをやってしまい、リリースは2020年1月に決まった。
なるようになるのだ。

曲に戻る。ジャズなどはいかに曲から離れて曲芸をするか、個性を見せるか、あるいは勝負するかに眼目を置きがち。ぼくは技術や個性から離れ、曲の魂に触れ天と地に繋がることで、エネルギーある音と音楽を作り喜びを感じたい。その音で癒されるのもいいが目的ではなく、自分に正直にまっすぐ音を出すことで、人々に勇気を与えられれば嬉しい。そんな人との交流をしたい。

オリジナル曲をシンプルに演奏するだけのサガインだからこそ、地味ながら多くの冒険や探検や価値転換が生まれ、それが人生であり世界なのかと思う。大分と京丹後の地方に住む人間が世界に発信している。

CD album Aki / Sagaing (JVT0020, Denmark)
2020年 正月リリース

f:id:salmosax:20191217224858j:plain