salmosax note

音楽家・山内桂 の雑感ページ

 マルセイユ

7時起きで初めてのマルセイユに向かう。
15時頃に着いてふらふらホームを歩いていると、仕事で来れないはずの去年のフェスで知り合った友人が迎えにきてくれていて助かった。アバウトというか、目が覚めたのが昼だったらしく、この感じがいい。よく聞くと仕事というか勉強しているのが天文関係のようで更にびっくり。
駅から歩いて10数分のアパートの最上階で、テラス付きのこじんまりと、でも素敵な色配合でかつ落ち着いたラテンな部屋。


日差しは強く、今回の旅で初めて暑さを感じた。フランス第2の都市で、地中海交易で栄えたようで、北アフリカ、中近東、ラテンの匂いがしていて、街の喧騒ぶりはナポリリスボン、シシリーに通じる。
汚いものにふたをするばかりで、クリーンクリーンと異様に叫ぶ日本では、安らぎの場を失った魂がさまよっている。
坂の多い街で散歩するのに少し骨が折れたが、おかげでアイスクリームがおいしかった。港は多くのヨットやボートが埋め尽くしていて、大きな船が何隻も出入りしていた。
日が海に沈むのを見ていた。その赤い太陽はオランダのテクセル島で見た日没を思い出したが、その時以上に本当に赤く妖しく燃え輝き、少し恐くもあった。エキゾティズムで海外のモノやイロを見がちだけど、明らかに日本とは光線が違うのだろう。そしてそれらから成り立つ人間の感覚も当然に違い、ヨーロッパ人の好む赤と日本人のそれとは違うのだと聞いたこともある。音の聴こえ方も違うということになる。
それからカフェに立ち寄り、帰ってからもテラスでお茶。まったりしたいい時間だ。


翌日は長くなってうっとうしくなった髪を切ることにした。日本でも基本床屋には行かないので、ウキウキとして安い散髪店を見つけて飛び込んだ。そこのニイちゃん、まったく英語は通じず、やっと少し切ってくれということが伝わった。あとは野となれ、でのぞんだが、ま、それなりにスッキリした。少し粗いながら要領のいい作業だった。カラテとかなんとか言い出したニイちゃんに別れを告げた。9ユーロ。


夕方帰ってきた友人と近くをうろつき、バーでは多くの仲間が集まり、フランスでは珍しくみんな英語で応対してくれた。日本のどこから来たのか、なぜマルセイユに来たのか、何をしているのか、など繰り返す同様の質問にいちいち答えるのは疲れたがありがたかった。そのあとに食べたタパスはおいしかった。特にアツアツの溶けたチーズの中に卵が浮かんだヤツ。



ぼくの英語はおそろしくひどい。中学校の英語を思い出しながら、単語という記号を適当に並べるだけのもので英会話とは言えない。それで音楽や宗教や歴史や宇宙のことまで話すのだから大変だ。聞く方も大変だろう。でもコミュニケーションにはなっている。
日本人はそもそも訴えることがないのと恥ずかしがり屋のためにコミュニケーションがへたで、そのことはよく分かるし、必ずしも悪いこととも思わない。
ぼくの場合は音楽というものが核になったことで、それを中心に人生が回っている。外に向かうベクトルを持ったことによって出会いやコミュニケーションの必要性も増し、そんな人生を楽しんでいる。