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音楽家・山内桂 の雑感ページ

 アジア4・フエ(公演)

2/22 にフエで自称初の有料コンサートにトライしてくれたトゥアン。一旦は公演を諦めた彼だが、それでもハノイサイゴンの友人を紹介するなど協力を続けてくれた。
自ら美術家で巨大なアルミのオブジェなどを作り、海外でも活躍していて、冬の北海道にも来ている。
アーティストの厳しさを知り、また地方都市フエを少しでも変えようと今回動いた。ヨーロッパ人などは基本的に基金で来て演奏するので無料ライブでいいし、有名ミュージシャンはまた問題ないが、ぼくのようなミュージシャンにはサポートが一切ない。


旧市街にあるかれのカフェ・テン(Then )。素敵で気持ちのいいスペースには美術品も展示され、裏にはかれの作業場もあり、目の前は道路を挟んで運河になっている。
公演当夜、アート仲間や知人が集まり、ちょうどいいあんばいに席は埋まった。音に集中するため窓やドアを閉めるよう頼んだが、そもそもガラスでなく木製のブラインド状の風通しの良い窓だし、外のテーブルで聴いてる人もいるのでドアを閉めるのも諦めた。
ぼくのような音楽に馴染みがない人々、車やバイクの騒音、それに風土や文化の違いを前に、いつもの演奏をしていいのか迷いが生じた。
でも静かな心の集中した世界を思い出して欲しいし、そんな音楽を開拓し続けたいのだ。迷いを捨てて軸足をずらさないよう心がけた。
結果は即興の重要な部分を表現できず曲中心的になったが、みんな喜んでくれたようでなによりだった。
あとで驚いたことに、お客さんの大半は知らない人達だったらしく、トゥアン自身ビックリだったとのこと。フエ有料コンサートにとって幸先がいいことだし、光栄なことでもある。



一般人にまず英語は通じない中、ぼくが接触する人達の多くは英語が堪能で、国際感覚も中々だ。よく聞いているとその英語はけっこう不正確で、それでも十二分にコミュニケーションが成り立っていて、ぼくなどは会話の速さに付いていけない。
彼らはフエだけでなく多くの友人仲間がいて、良好な人間関係ができている。バイタリティがあり、感性も豊かだ。そんな彼らと濃密な時間を持つことができて嬉しかった。
最後にはぼくのことをダディと呼びだしたトゥアンと再会を固く約してサイゴンに向かった。