salmosax note

音楽家・山内桂 の雑感ページ

 アジア冬・3(バンコク)

11/25 気持ちのよいホテルに2晩泊めてもらい、赤バスで空港へ。チェンマイからまたバンコクに戻りスクンビットの会場 LAM へ。そこは1月に演奏したWTFの2軒隣で、その時に訪ねてもいた所だった。翌日にはクアラルンプールと、ハードスケジュールだ。
バンコクチェンマイ同様の祭のようで、でもその影響は間逆に街は静かで、みんな川岸のイベントに行っているらしい。道理で夕刻のラッシュはすごかった。
お客さんの出足が鈍いため開演は10時になった。この日もピンでひとりだけだった。聴衆が少ない分集中した演奏会になり、最後は自分で作った水の映像を浴びてマイクフィードバックも使いしてタップリ演奏した。オーナーの Maft も喜んでくれたし、CDも売れて嬉しかった。


その後事件が起きた。
お客の日本人2人と食事に行って1人戻ると、店が閉まっていたのだ。楽器も荷物も中にあるまま閉め出されたのだ。日本語の会話に時間は流れた。一瞬予感はした。午前2時過ぎ、、、微妙な時間だがバーとして普通は開いているだろう。前回のときの深夜の賑わいの記憶もあった。でもこの夜は祭で人が少なかったのだ。ミスではあった。


1人途方に暮れた。かなり動揺した。この状況が冗談にも思えた。でも朝8時に空港に行かなければならなかった。
異国の地の深夜、努めて冷静にあらゆる可能性を考え、店のWiFiが届く範囲から出ないように気をつけて、スマホの充電を気にしながら、考えられる限りの手段やメールで各方面に応援を求めた。やっと1人返信を得てやり取りするも解決に至らず。オーナーにfb電話するも出ない。かれがいるらしいアパートの下で名前を呼ぶも空しく時間は過ぎる。
万策尽きて、ひとまず泊まる予定だったJamにタクシーで行き、残していた荷物を回収して直ぐにとって返しLAMの前で待機。
でもなにを!?
もう予約の飛行機に乗れない覚悟をした。ただ諦めはしたくなかった。正直久しぶりに祈りもした。


そうして当てもない待機をしていると、つまりブラブラとボウーを繰り返していると、薄明におばちゃんが現れてガサゴソしている。屋台の準備のようだ。その内なんとなく話しかけると英語が通じるのでボソボソ顛末を話していたら、やがて彼女は黙って店のシャッターを開けるや鍵でドアを開けてしまったのだ。
こんな驚きはない、喜びもない、奇跡が起きた。


朝6時、寝ないままタクシーで空港へ直行したのだった。