salmosax note

音楽家・山内桂 の雑感ページ

 田植え祭〜生音

前回のブログ「田植え祭」で書かなかった重要な点がある。それはPA、つまりスピーカーやマイクを使わなかったこと。
PAシステムを否定しているのではない。音を発生させる、音楽を作るのに、今や電気は重要な位置を占めており、個人的には世界各地で色んなミュージシャンと共演するのに、むしろエレクトロニクスの演奏の方が相性が良かったりもする。


一方で、今の社会の音に対する鈍感さ。これについては説明は不要だろう。
ひとつだけ言えば、かつての盆踊りに拡声器はなかったことを思い出して欲しい。今やスピーカーが歪む大音量が常態化していて、人々の集中力もそれに比例して鈍化している。耳は機械ではなく、人の意識無意識下で音の選別をしている。人の精神に及ぼす影響は大きい。


正直今回、山の田んぼで唄がどこまで届くか、田植え参加者や観客が耳を使ってくれるか、そんな不安があった。そしてPAがないことは、隠しテーマであり大きなチャレンジでもあったのだ。
でもイベントが始まるや危惧は吹き飛んだ。唄やサックスや小太鼓の音は空気に乗り、土や水や草や木や人を震わせ、天に昇っていった。


(これについては近々動画をアップ予定なのでお楽しみに。)