salmosax note

音楽家・山内桂 の雑感ページ

 ホフネンスキー

小倉〜博多〜大分とホフネンツアー。その博多からのバスの車窓越しに見える残雪に心が動いた。


今回の大雪で、裏山での撮影もそれなりのサバイバルだった。
連日のように車で入山し、山中で立ち往生していた若者を連れ帰ったり、1度は自分自身の車が吹き溜まりでスタックしてしまい、一時はどうなるかと思うこともあった。そんなチャレンジは続けていたし、撮影を優先していたことは正しい。でも、基本的にスキーができないここ九州に、かつてない程の大雪が続いたこのスキーチャンスに指をくわえていた自分の身体と心に腹立った。


翌日スキーの道具を引っ張り出して九重連山に向かったが、少し手遅れで積雪は不十分。過去すでに滑った山はパスして、結局道路沿いの樹木のない小さなピークを選んだ。
実はブーツやいくつかの用具が経年破損して使い物にならなくなっていて、そのことも自分をブルーにしていた。幸い1足のスキー兼用登山靴が無傷でいてくれた。
もっと積雪があればスキー板裏にシールを着けてスキーで登るのだが、スキーはザックに付けて一歩一歩足を運ぶ。その時の身体や、空気、音、いろんな感覚が、全国の山々を一人滑ってきた記憶と同時によみがえる。
そして登頂。おむすび山1083mとある。名前があったんだ。
天気は良く、素晴らしい頂上直下の斜面だけど、雪は重く草も少し出ているし、なによりも約10年振りのいきなりのスキー滑降に自信はなく、そこを迂回しながら滑り降りた。その滑る様は人に見せられたものではなかったが、1度も転ばずに車まで辿り着いた。これぞ山岳スキーの極意。


事実上引退状態だった自分の中に、いまだ燃えるものがあったことを感じるできごとだった。
渓流や雪を見てときめく心が今の原点になっており、それらが今のぼくの音楽や映画を形作っている。


温泉につかり、ホフネン上映大分スリーデイズの第2夜のため、アトホールに向かった。