salmosax note

音楽家・山内桂 の雑感ページ

 夜の森

〜闇に浮かび上がる物語〜


ぼくの住む家の七瀬川を挟んだすぐ背後には、大分市を守るように屏風然と、本宮山、霊山、宇曽山が連なる。長い年月それらに通う内に、そこにある小さな池を撮り続けて映画ハルリができたし、いくつもの曲ができた。
そこでこの秋に思いついたのは、この山域にある神社を全部廻るというものだった。現在4、50参拝し、それでもまだ少し残っている状況。それについてはここでは書かないが、その中で野津原の小さな栗灰神社に行った時のこと。
そこは何度か行ったことはあったのだけど、姉が存命だった両親を連れてドライブの折、なぜか必ず一休みしていたところで、それは月に2度ほどのペースだったという。
地図上で、栗灰神社の更に奥に神社マークを見つけてそこを目指した。そここそ栗灰の地だった。その途上、オープン直後の「森のごはんや」に出会った。
それから運命も感じ交流を続ける内に、北米ツアーから帰って11月に入ったある日突然にイベントを思いついた。栗灰の森で「ハルリ」を上映すること。更に博多のコンテンポラリーダンスのハエちち(宮原一枝+徳永恭子)にハルリのスクリーンのごとく踊ってもらうこと。
すぐに宮原さんに打診。そして森のごはんやに行ってオーナーの小野さんの了承をもらい、その夜にはチラシやウェブのページも完成させたのだった。


晴れの続く中、イベントの11月27日前日から雨になり当日も雨の予報。でも考えてもしかたないし、開催に向けて準備に集中。そして当日は昼過ぎに雨は上がった。刻々の状況に対応するため準備に神経はつかったものの、何事も成るように成る。
こうして「夜の森」〜闇に浮かび上がる物語〜は始まった。
樹々の間に張ったスクリーンに「ハルリ」は映し出された。夜の森に水の映画ハルリが浮かび上がった。まさに幻想的な上映だった。以前より持っていたイメージが実現した瞬間だった。
続いて再度ハルリを上映。といっても今度は無音でスクリーンなし。そこにハエちちが舞うのだ。本当に予想どおり、いや予想以上に夜の森に彼女たちは浮かんだ。遠くの樹々はぼんやりと、しかし彼女たちの陰に隠れ、放り投げられた落ち葉や周りの樹々は雨に濡れたが故の鋭い輝きを放つ。白い衣装のかれら自身、ハルリにより色が変化しながら明滅を繰り返した。
次の1月に大分市でハルリのサントラを使ったダンス作品を披露するかれらの、この日初めてハルリを鑑賞した直後の幽玄な森の精の踊りだった。


ぼくは光を浴びないように木の陰でソプラニーノサックスを吹きながら、この様を見ていた。終わり方、背を向けて佇んだ彼女の背中にぼくの名前が刻まれていた。だれが字幕を写すなど演出できようか。天の采配はかくも素晴らしいものだった。すべてが栗灰の神と森に仕組まれたごとく進行し終了した。
若干の事故もありつつ、雨上がりの山の中に予想以上の人が参集したこともすごかったし嬉しかった。