salmosax note

音楽家・山内桂 の雑感ページ

 初アジア 4 - 最終章

(タイ、バンコク 1/16-19)


8日目。シンガポールから再びバンコクスワンナプーム空港へ。
空港列車で終点まではスムーズに移動。そこからタクシーに乗る段で、ドライバーや係員が行き先「ZOO」が分からないと騒ぎになる。適当な所で降ろしてくれればいいのにと思いつつ、お互いに英語がお粗末で意思疎通が難しく、当日朝に来た主催者からのメールもなぜか消えて電話番号も分からないので、ZOO近くの警察署に行こうという。そこにはワイファイもあると。
やっと着いた警察署だが、ここも英語が難しいはワイファイはないはで、ラチが明かない。
と、そこでタクシーはトランクにスーツケースを載せたまま走り去ったことに気づいた。蒼ざめて、大いに騒いだ。騒ぐしかないと思った。でも事は更にラチが明かず、本当に困ってしまっているところに、タクシーの運ちゃんがスーツケースを持って現れた。疑ったことを少し反省しながら握手を交わした。
結局警察は役に立たず、地図を見せて方向だけ聞いて歩き出した。その後何人かに訊ねたが、みんな言葉が通じないか、通じても違う方向ばかり言う。最後は自力で探し辿り着いた。


主催者の JD Mozaic はフランス人でミュージシャン。ZOOは自宅で時々イベントをやるだけらしい。だから公的には知られていなかったんだ。
当夜のイベントは、もともとアメリカの Gerry Hemingway(ドラム)が決まっていたのにぼくを入れてくれたもの。
色々準備が忙しそうなので、その間に疲れをほぐしに隣のタイマッサージ店に行く。

戻ると、イベントは立食制なのでごちそうが並んでいる。さすがフランス人。
それに、すごい数のひとたちが集まってくるのに驚愕。しかも演奏が始まると静かに集中して聴いているのだった。普通、酒や食事が入ると騒音雑音が増えてこの手の音楽は難しい。まして100人近い人々がいるような環境でこうなのは、JDの人柄や努力があってのことだろう。


Gerryの映像を交えたソロが終わってぼくのソロの前に、かれと3セットのデュオについて打ち合わせていて、10年以上前に大分で彼の演奏に接していたことが判明。そのセンスと緻密な作曲のバランスに感動したのを思い出した。


さてぼくの番。今夜は最後の演奏だし、なによりもこの熱気の中燃えないわけにはいかない。
サルモサックスのフルコースを披露した。後半は自作スライドショーを浴びて。
確かな手応えを感じ、賞賛の声もいただき、それは語弊はあるがここがタイ、バンコクとは思えないほどだった。
初めてのアジア。シーンがあるのか、聴く人がいるのか、なにも見当つかずやって来た。でもアジアにも頑張っている人たちがいて、心で音楽を聴き、求めている人たちがいた。
音を理解し音楽を通してつながる人たちがいて、かれらと出会うために音楽活動をしているのだと、あらためて確信できる旅だった。世界中、同じ状況なんて言わない。でも世界には常に可能性も希望も人もいる。
もちろん、2人のセットも好評だった!



9日目〜。演奏の夜はZOOに泊めてもらう。
翌日、近くの船着き場からチャオプラヤー川をボートでくだり、スラサックにあるホテルに落ち着く。
残りの日をワット・ポーの涅槃像に行ったり、屋台を覗いたり、ツーリストとなって楽しみ、バンコクをあとにした。
全行程雨に遭わず、良い友人たちができ、幸運にも恵まれ、思った程の赤字にもならず、素晴らしい旅を終えた。