salmosax note

音楽家・山内桂 の雑感ページ

 EUツアー (アムステルダム)

(6/11-12)


ベルギー最後の夜は、朝4時の就寝で終った。
ジョン・ミッシェルにブルッセル・ミディ駅まで送ってもらい、タリスでアムステルダムへ。
アムスはちょっと思い出深い土地でもある。
そこはぼくが脱サラして初めてヨーロッパ滞在を果たした土地で、1ヶ月間B&Bに滞在し、その後も何度かそこにやっかいになった。そのトラム駅は Maasstraat(マースストゥラートゥ)といい、マストラウト(ヤマメ)に響きが似ていて気に入っていた。泊めてもらう友人Kさんには、ずっとアムスで助けてもらっているが、その最近越した家はなんと、そのB&Bのほぼ真裏にあり、なにがしかの因縁を感じる。


荷物を置いて休憩後 ZAAL 100 へ。ジャズを中心に色んなことが行われている場所で、ZAALは劇場の意味だとか。
この日は激しめの即興カルテットに参加しての演奏なので、ちょっと不安を感じていた。着いて驚いたのは、そのサックスのイェドは、7年前にデンハーグで共演していたブラジル人だったのだ。リーダーでドラムのマルコスも暖かく迎えてくれた。
かれらにピアノとギターが加わった4人の演奏が始まった。凄まじい演奏だった。更に不安がつのる。でもこんな男を招いたのは君たちなんだからね、知らないよ、と心で呟いて、2部の演奏に加わった。
かれらに対して小さな音と少ない音で挑み続ける。時々一瞬爆音をのぞかせてはスッと引いてのやり取りを続ける。これがぼくのしたいことなんだからね、とひるまない。予定調和なんてまっぴらだ。


なんとか思っていたより演奏は成立し、お客さんたちはおもしろがってくれたと思う。ミュージシャンも全然違う世界観で楽しかったと言っていた。
これでアムステルダム1日目は終わり。ふゥ〜




翌日はゆっくり起きて、近くのベアトリクス公園を散歩したりして過ごす。
この公園はぼくの初CD「Salmo Sax」にも収録されている曲、「Impression of Ams.」が生まれた思い出の場所。それ以来、なにかものうげで切ないこの地に足を運ぶことはなかった。


夕方から OCCII(オキ)コンサートへ。前日も世話してくれた若手のミュージシャン、ヤスパーが主催してくれる。
この会場は1回来たことがあったのだが、すっかり別会場と記憶違いしていて探すのに手間取ってしまった。40分くらい楽器を持って歩き回って疲れてしまった。約束の時間にかなり遅れるが、まったくノープロブレムなところがいい。
きょうはソロなのでリハーサルも特に必要ない、が、せっかくなのでマイクを準備してもらった。何回か偶発的に実行したフィードバック奏法をするために。アムスの連中、喜びそうだし。


ここはいわゆるライブハウスなので、当然ながら大音量でバックグラウンド音楽を流している。そのあと演奏に入るには儀式も必要だ。こんな時にアルトでやる曲が高音域ノートを連続して奏でる「hi,」で、場所や人をリセットする作用がある、多分。高音のシンプルな波形が鼓膜そのものを振るわすことによって何がしかの精神的肉体的作用が起こる、多分。
続いてソプラニーノによる組曲をやって、その〆にまた鼓膜を振るわす「カミサン」。こちらの作用は更に強力で、お客さんが耳を塞ぐ確率は高まる。「hi,」が安定化作用があるのに対して、こちらは頭も肉体も掻き回して不安定化させることで再安定化を図る、多分。
それにアムスの連中はこんなのを喜ぶのだ、多分。
続いてアルトで即興。最後にオマケでフィードバック奏法をして終了。


演奏後、案の定「耳が」楽しかったとのコメントがいくつか。それと組曲の方は森や鳥や動物を連想する,と何人かがエキサイトしてジェスチャーを交えて訴えてくれるので楽しい。この連想傾向は日本もヨーロッパも似ている。


明朝はコペンハーゲンに飛ぶ。6:55 の飛行機なので 5:07 のバスに乗らなくてはならない!