salmosax note

音楽家・山内桂 の雑感ページ

 インタビュー1

【音楽活動について】


Q1. 今回新潟で初めての演奏会を実現できることをうれしく思います。山内さんは35年間多岐にわたる音楽活動を続けていらっしゃいますが、まずは、音楽活動を始めた理由を教えていただけますか?


音楽活動は、小学校時代、大学以降、脱サラ以降に分けられます。
小学校時代:よくあるピアノ教室が始まりですが、それよりも小学校3年生からの器楽部活動が大きかったです。楽器はリコーダー、ハーモニカ、などでしたが、最後はウッドベースでした。その先生が担任でもあって、毎日が音楽的でとても楽しく充実していて、各地で演奏会もしましたから、あとになってあれは音楽活動だった、と認識しています。
大学以降:普通にはこれからが音楽活動でしょう。先の器楽部ですが、6年生の時に転校したのです。音楽を失い大きなトラウマになりました。この飢餓期間が高校でジャズに目覚めさせ、後の音楽活動につながいっていることに最近気づきました。たまったエネルギー全部をジャズと高校卒業後買ったサックスにぶつけました。こうして活動し、その後就職もしましたが並行して続けました。
脱サラ以降:48才のある日、音楽活動が困難になることが見えて、翌日辞表を出しました。音楽だけは棄てられないと思いプロ活動を始めました。
ご質問の理由については結局わかりません。職より音楽を選択したわけですから、宿命なのでしょうか。




Q2. なぜ即興演奏を始められたのですか?


松山の大学に入って、音楽の最先端(現在)に目が向きだしました。今起こっていることに。そしてより政治的にもなりました。そういった結果、フリージャズに出会いました。若気もあって、怒りのない音楽や主張のない音楽にはあきたりませんでした。1年生の時からフリージャズを演奏しました。でもやがてフリージャズの定型が見えてきました。そしてヨーロッパ系のジャズ、即興演奏に向かいました。そんな時にミルフォード・グレイブスが初来日し松山公演したのです。衝撃でした。その後もデレク・ベイリー、ハン・ベニンク、トリスタン・ホンジンガーなどを招聘し、EEUや間章氏など、多くが家に泊まり、かれらと世界の空気を吸いました。




Q3. (幼少期〜音楽活動の初期に)強く記憶に残っている音/音楽体験について教えてください。


Q1と重なりますが、更にその以前、4、5才の頃に多分夢などで聞こえたシジマの音が残っています。夜、遠くから聞こえてくる、かすかな何ともわからない様々な音や気配の集合音。汽車の音、街の音、風の音、大地の音、、、。そんな音が今即興で出している音に通じることに気づきました。これが音の原体験なのかと思っています。もっと言えば、自分に連なる生命の始まりからの音の記憶があって、即興演奏時にはそんな音を引き出しているような気もします。




Q4. ぶっきらぼうな質問ですが・・「即興」とは何ですか?


自由。単純に言えば形がない音楽でしょう。




Q5. 演奏活動を続けて来て、音楽や即興演奏に対して考える/感じることは変わりましたか?


自分自身、不幸にして音楽と政治や思想などを結びつけてしまい、そこに気付き、脱出するのに長い時間を要しました。
今思うのはエネルギーのある音そのものがすでに自由なのだということです。エネルギーと自由は対です。
人の営みはすべて固定化していきます。そしてエネルギーは新しいものを作り出します。
「即興」にも固定した「形」がありました。ジャズや現代音楽などの固定化に対して新しくできた音楽のひとつが「即興」ですが、その役割は半ば終っているかもしれません。目に見えるものは結果であり形にすぎません。
人は中身でなく外身を見てしまいます。これからは中身や見えないものに目を向ける時代でしょう。音そのものの質を身体で感じる時代です。荒ぶる音でなく気持ちの良い音を。
ただ、これらの表面を見てはいけませんし、それらを求めてもいけません。求めるのは自分の内にある感覚です。その先に自由とエネルギーがあるのだと思います。
そうして音を介して人と細胞レベルで交流し、またできるのが音楽だと思います。それができないのなら音楽はつまりません。



Q6. 山内さんは作曲作品も発表していますが、表現として即興演奏との違いは?


自分の中の最重要なテーマは音質なのです。その上で自分にとって割と不自由なくできる形式として即興演奏しています。「音の質」で音楽を見た時にジャンルの意味はなくなります。作曲集としてリリースした「祝子」には、そんな思いもあります。
とは言え両者は当然形に違いがあります。私は昔、「サックス」に限定して「音楽」を表現することを決めました。その枠いっぱいの中で音も形も捉え、最終的に「SALMO SAX」ワールドを広げ、楽しみたいのです。
それとひとこと付け加えれば、最近の作曲は、その閃く瞬間の感覚は即興のそれと近いような気がしていますし、実際即興と作曲に境はなく表裏一体のものだというのも本音ではあります。




Q7. 音楽活動同様に力を入れていることはありますか?


今は状況的に音楽以外のことを、「同様に」力を注ぐ余裕はありません。関連した企画や計画はありますが。