salmosax note

音楽家・山内桂 の雑感ページ

 土取利行

ぼくが即興演奏にのめり込んだ松山の学生時代、多くの国内外のミュージシャンや関係者が訪れ、かれらの大半がうちに泊まっていくような熱い時代と状況があったことは今までにも述べてきた。
その中に土取さんもいた。静かで帽子をかぶり、あごの下にだけ髭をのばし、見た目のイメージとはちょっと違う低めの声、他のミュージシャンたちとは違う目線の方向、持参の玄米弁当(?) 、、などが印象だった。


最後の来訪は故高木元輝氏と2人によるワークショップで、かれとの共演の機会を得た。中でもぼくのソプラノサックスとの duo セットはメリハリのある、しかも疾走感のある爽快なもので、当時の自分の演奏の中でも強く記憶に残るものになった。カセットテープを見ると、79年4月8日とある。
その後かれは世界を放浪し、羽ばたいていった。


時を経て大分に移り住んでいたぼくは、テレビでかれの特集を見た。少しブルーな時期だったぼくは、無性に会いたくなって郡上八幡のかれが設立した「立光学舎」を訪ねた。89年6月のこと。
アポもとらずに探し探し辿り着くと、ちょうどピーター・ブルック劇団の公演から帰国したところで、庭には山のようなに荷物が積んであった。
初対面の故桃山晴衣さんにも優しくしていただいた。その茅葺きの広間に2晩泊めていただき、郡上八幡でのかれらの所用に付いて回ったりした。
その後1、2度訪れ、かれらの本を読んだり音源を聴いたりして、刺激とエネルギーをもらった。
そういったことを通して、自分は即興演奏を中心にして、自分の内の音を聴いて自分の音楽を作っていくことを再確認した。


それからまた時が流れ、09年2月14日にホロ響の主催でかれと再会,duo コンサートをする。
長く即興演奏を離れ、民族的な音楽や古代の音楽やその復活など、膨大な作業をしてきたかれがその日、久しぶりにドラマーとして即興演奏をするという。
光栄に思い、時の流れを思い、自分のターニングポイントに現れる土取さんを思い、その不思議さを思う。


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